社長が資金繰りでやってはいけないこと10選|黒字でも危ない会社の共通点
なぜ黒字でも会社は危なくなるのか
会計上の「利益」は、売上から費用を引いた計算上の数字にすぎません。一方、実際に支払いに使えるのは「現金(キャッシュ)」です。売上が立っても入金が先になれば、手元のお金は増えません。利益と現金のズレを理解しないまま経営すると、黒字なのに資金が尽きるという事態が起こります。
会社が倒産する直接の原因は「赤字」ではなく「現金が尽きること」。だからこそ社長は、利益以上に資金繰りに目を向ける必要があります。
社長が資金繰りでやってはいけないこと10選
- どんぶり勘定で資金繰りを把握しない
「だいたい大丈夫」で進めると、ある日突然お金が足りなくなります。 - 入金前に大きな支出を決める
売上の入金を当てにして先に使うと、入金遅延で一気に苦しくなります。 - 売掛金の回収を後回しにする
請求や催促を遠慮すると、回収が遅れ資金が寝てしまいます。 - 在庫を持ちすぎる
在庫は「形を変えた現金」。過剰在庫は資金を強く圧迫します。 - 納税資金を準備しない
法人税や消費税の納付月に資金が足りず、慌てるケースが多発します。 - 借入を「悪」と決めつけ無借金にこだわる
手元資金を厚く保つことのほうが、無借金より優先されるべき場面があります。 - 金融機関と良いときだけ付き合う
苦しくなってから相談しても遅い。平時の関係づくりが命綱です。 - 社長個人と会社のお金を混同する
線引きが曖昧だと、会社の本当の資金状態が見えなくなります。 - 赤字の原因を分析せず値下げで売上を追う
売れば売るほど現金が減る「自転車操業」に陥ります。 - 資金繰り表を作っていない
先のお金の動きが見えなければ、危険を事前に察知できません。
危ない会社に共通する3つのサイン
サイン1:手元資金が「月商1か月分」を切っている
万が一に備える現金は、最低でも月商の1〜3か月分が目安です。これを下回ると、トラブル一つで資金ショートの危険が高まります。
サイン2:借入の返済が利益を上回っている
利益よりも毎月の返済額が大きいと、稼いでも稼いでも現金が出ていきます。返済条件の見直しを検討すべきサインです。
サイン3:いつも支払いを「待ってもらっている」
支払いの先延ばしが常態化している会社は、すでに資金繰りが綱渡りの状態です。早めの対策が必要です。
最も危険なのは「利益が出ているから大丈夫」という油断です。黒字倒産は、まさにこの安心感の中で静かに進行します。決算書だけでなく、必ず現金の動きを見てください。
今日からできる資金繰り改善の第一歩
難しく考える必要はありません。まずは「3か月先までの資金繰り表」を作ることから始めましょう。いつ・いくら入って、いつ・いくら出ていくかを書き出すだけで、危険な月が一目で分かるようになります。
- 3か月先までの入金・出金を書き出した
- 納税資金を別枠で確保している
- 手元資金が月商1か月分以上ある
- 売掛金の回収サイトを把握している
- 金融機関と平時から関係を作っている
資金繰り表の具体的な作り方
「資金繰り表」と聞くと難しそうに感じますが、実際はとてもシンプルです。エクセルやノートで、次の3つを月ごとに書き出すだけで完成します。
① 月初の現金残高
その月のスタート時点で、手元にいくら現金があるかを記入します。すべての出発点となる数字です。
② その月の入金(収入)
売掛金の回収、現金売上、借入など、入ってくるお金をすべて書き出します。「いつ入るか」を必ず確認するのがポイントです。受注額ではなく、実際に入金される月で記入します。
③ その月の出金(支出)
仕入れ、人件費、家賃、税金、借入返済など、出ていくお金を書き出します。これで「月末にいくら残るか」が自動的に見えてきます。月末残高が翌月の月初残高になり、3か月先まで並べれば、危険な月が一目瞭然です。
資金繰り表で大切なのは「正確さ」より「先が見えること」。多少ざっくりでも、3か月先の危険を事前に察知できれば、十分に役割を果たします。
資金が苦しいときの「正しい対処の順番」
いざ資金が苦しくなったとき、慌てて行動すると傷を深めます。次の順番で冷静に対処しましょう。
- 現状を正確に把握する
あといくらで、いつ足りなくなるのかを数字で確認します。 - 入金を早める・出金を遅らせる
売掛金の早期回収や、支払い条件の相談で時間を稼ぎます。 - 金融機関に早めに相談する
余裕があるうちの相談ほど、選択肢は広がります。 - 固定費の見直しに着手する
不要なサブスクや経費を洗い出し、出血を止めます。
金融機関と良い関係を築くコツ
資金繰りを安定させるうえで、金融機関との関係は欠かせません。ポイントは「良いときも悪いときも、こまめに情報を共有する」ことです。
業績が良いときに試算表や事業計画を共有しておくと、いざ融資が必要になったとき、銀行は安心してお金を貸せます。逆に、苦しくなってから初めて顔を出すと、警戒されてしまいます。融資は「困ってから」ではなく「困る前」に相談するのが、資金繰り上手な社長の共通点です。
- 試算表をすぐに出せる(数字を把握している)
- 資金繰り表で先の見通しを説明できる
- 良いときから定期的に報告している
- 借りたお金の使い道が明確
この記事のまとめ
- 倒産の原因は赤字ではなく「現金が尽きること」
- 利益と現金は別物。資金繰りを最優先で見る
- やってはいけない10個を裏返せば強い会社の習慣になる
- 危ない3サイン(手元資金不足・返済過多・支払遅延)に注意
- まずは3か月先までの資金繰り表を作る
- Q. 資金繰り表はどのくらいの頻度で更新すべき?
- 最低でも月1回、できれば毎週更新するのが理想です。動きが激しい時期はこまめに見直しましょう。
- Q. 手元資金はいくら持つべき?
- 業種にもよりますが、月商の1〜3か月分が一つの目安です。入金サイトが長い業種ほど多めに確保します。


