社長が資金繰りでやってはいけないこと10選|黒字でも危ない会社の共通点
- なぜ黒字でもお金が足りなくなるのか
- 資金繰りでやってはいけない10の行動
- 危ない会社に共通するサイン
- 今日からできる資金繰り改善の基本
なぜ「黒字」なのにお金が足りなくなるのか
利益と現金は、まったく別のものです。利益は「売上−費用」の計算上の数字。一方、現金は実際に手元にあるお金です。売上が立っても、入金がまだなら現金は増えません。仕入れや経費の支払いが先、入金が後——この“ズレ”が資金繰りを苦しくする最大の原因です。
まずは「資金繰り表」で先を読む
資金繰りの不安をなくす第一歩は、未来のお金の動きを見える化することです。難しい会計知識はいりません。次のように「いつ・いくら入って・いくら出るか」を3か月先まで書き出すだけで十分です。
| 項目 | 今月 | 来月 | 再来月 |
|---|---|---|---|
| 月初の現金残高 | 200万 | 150万 | 180万 |
| 入金(売上回収) | +300万 | +350万 | +320万 |
| 出金(仕入・経費・返済) | −350万 | −320万 | −330万 |
| 月末の現金残高 | 150万 | 180万 | 170万 |
この表があれば、「来月は残高が薄くなりそうだ」と事前に気づけるようになります。資金繰りは、ピンチになってから動くのではなく、ピンチを予測して先に手を打つもの。たった1枚の表が、社長の安心を支えてくれます。
資金繰りでやってはいけない10の行動
ここからが本題です。黒字でも危ない会社が、知らずにやってしまっているNG行動を10個、順番に見ていきましょう。
① どんぶり勘定で現金残高を把握していない
今いくらあって、来月いくら出ていくのか。これを把握せずに経営するのは、燃料計を見ずに高速道路を走るのと同じです。「だいたい大丈夫だろう」という感覚ほど危ういものはありません。まずは資金繰り表で「見える化」し、数字に基づいて判断する習慣をつけましょう。
② 売上が伸びているのに油断する
急成長期こそ危険です。売上が伸びると仕入れや人件費の支払いが先行し、入金が追いつかず現金が一気に不足します。これを「増収貧乏」と呼びます。売上が2倍になれば、必要な運転資金もおおむね2倍に。勢いに任せて受注を増やすほど、立て替えるお金が膨らみ、気づけば現金がカツカツ——という落とし穴にはまります。
③ 売掛金の回収を後回しにする
「請求は来月まとめて」「催促は気まずい」——この甘さが命取り。回収サイトが長いほど、会社のお金は他社に無利息で貸している状態になります。請求はその場で、入金期日は短く、遅れたら早めに連絡。当たり前のことを徹底するだけで、手元の現金は驚くほど変わります。
④ 在庫を持ちすぎる
在庫は「形を変えた現金」です。売れない在庫を抱えるほど、現金は棚に眠ったまま。仕入れすぎは資金繰りを静かに圧迫します。
⑤ 利益をすべて使ってしまう
儲かった分を設備や交際費で使い切ると、いざという時の備えがゼロに。利益が出たときこそ、一部を現金として残す習慣が大切です。
- ⑥ 高金利の借入に安易に手を出す:目先の資金欲しさにノンバンクへ。返済でさらに苦しくなる悪循環に。
- ⑦ 納税資金を分けて準備しない:消費税や法人税は「預かっているお金」。使い込むと納税期に資金ショート。
- ⑧ 銀行と平常時に付き合わない:苦しくなってから駆け込んでも遅い。元気なうちの関係づくりが命綱。
⑨ 社長の個人口座と会社の口座を混ぜる
どんぶり化の元凶です。会社のお金の流れが見えなくなり、いくら残っているのか誰にもわからなくなります。口座は必ず分けましょう。
⑩ 「なんとかなる」と問題を先送りする
資金繰りの悪化は、早く気づくほど打つ手が多くあります。融資の相談、支払いの調整、コスト削減——どれも、時間に余裕があるうちなら冷静に選べます。先送りした分だけ、選択肢は確実に減っていきます。違和感を覚えたら、すぐ手を打つことが鉄則です。
危ない会社に共通する「3つのサイン」
次のサインが出ていたら要注意。早めの対処で、会社は十分に立て直せます。
| 危険サイン | 何が起きているか |
|---|---|
| 借入の返済が利益を上回る | 稼ぐ以上に返済しており、現金が減り続ける |
| 支払いを待ってもらうことが増えた | すでに資金繰りが限界に近い状態 |
| 毎月の残高を見るのが怖い | 把握を避けている=最も危険な心理状態 |
今日からできる資金繰り改善の基本
難しく考える必要はありません。資金繰りの改善は、特別な才能ではなく「習慣」で決まります。次のことを毎週・毎月のルーティンにするだけで、お金の不安は大きく減っていきます。
- 毎週、現金残高と翌月の入出金をざっくり確認する
- 売掛金は「いつ入るか」をリスト化し、回収を早める
- 納税資金と予備資金を、別口座に先に分けておく
- 利益が出たら、最低でも1か月分の固定費を現金で残す
【具体例】黒字なのに資金ショートしかけたA社の話
ある内装工事のA社は、受注が好調で決算は黒字。社長も「うちは順調だ」と感じていました。ところがある月、職人さんへの支払いと材料費の支払いが重なり、あと少しで支払い不能になる寸前まで追い込まれたのです。
原因はシンプルでした。工事の入金は「完成・引き渡しの2か月後」。一方で、材料費と人件費は工事中に先に出ていきます。受注が増えるほど、先に出ていくお金(立替)が膨らみ、黒字なのに現金が枯れる典型的なパターンに陥っていたのです。
A社が立て直しのために行ったのは、次の3つでした。
- 着手金(前受金)をもらう契約に変え、入金を前倒しした
- 主要な仕入先に支払いサイトの延長を相談した
- 銀行に運転資金の融資枠を平常時に確保しておいた
結果、入金と支払いのタイミングのズレが解消し、資金繰りは劇的に安定。社長は「利益より先に、お金の流れを見るべきだった」と振り返っています。
よくある質問(FAQ)
- 会社は赤字でなく「現金切れ」で倒れる
- 利益とお金は別物。見るべきは現金残高
- NGの代表は「どんぶり勘定・納税資金の使い込み・先送り」
- 口座を分け、売掛金を早く回収し、現金を残す
- 固定費の1〜3か月分の現金が会社を守る盾になる


